こだわりのロングセラーNo10

 ハクキンカイロ




はすぴー倶楽部では
ロングセラー商品絶滅寸前のこだわり商品を紹介しているのだが、
今回の「ハクキンカイロ」はどちらのページに入れるべきか悩んでしまった。
使い捨てカイロに押されて絶滅寸前のような気もするし、福助の足袋のようにロングセラー
商品として確立されているようにも思うから。
まっ、ちょっくら調べてみてどちらのページに入れるか考えてみようとっ。。。


売り出されたのは
大正12年(1923)、矢満登商会(現ハクキン)の創業者、的場仁市によって
白金の触媒作用による酸化反応熱の原理を利用したカイロは、
白金懐炉と命名された。
当初はたった3人の社員で家内手工業的に作り、社長自ら売り歩いたという。
当時の値段は1個5円、教員の初任給が約50円の時代だったから、そこそこの高級品という
しろものだったと思える。


創業者の的場仁市氏

そして戦後の昭和21年(1946)空襲で社屋や工場を焼失してしまい、しおしおのぱぁ〜状態と
なるが、ファイトぉ〜いっぱぁーーつ!!と 社員30人で再出発することになる。
孔雀マークのハクキンカイロは、海外でもピーコックブランドで有名になり、昭和37年には
南極観測隊が携帯したという。そして「南極2号」のさゆりちゃんと一緒に隊員たちは
温まったらしい。。。(笑)
南極観測隊の使用は本当で、これで信用をますます得て、人気商品に成長。類似商品も
出回るようになった。人気の理由は性能の良さはもとより、使いやすさ、安全性、経済性から
根強い人気を保っているようだ。

そもそもハクキンカイロがなぜ温かいかというと、燃料の直接
ベンジンを燃やすのではなく、
気化したベンジンが白金の
触媒作用で徐々に酸化発熱する仕組みになっている。
また火口が単なる石綿やガラス繊維でなく、白金を独自の製法で加工した”白金発熱体”である
ことがポイントのようだ。
触媒効果は、いわゆる車のマフラー(排気管)にある環境に悪い物質を中和してしまうハイテク
技術だそうで、環境問題に貢献している。1920年代に触媒を利用したカイロを作っている
ちゅーことはさすが工業生産国
ニッポンチャチャ♪である。
詳しい説明は公式HPに書いているので興味のある方はこちらを参照して欲しい。




やはりここで
使い捨てカイロとの比較をしなくてはならないと思う。
まず使い捨てカイロは保温時間がだいたい10時間に対して、ハクキンカイロは64〜65℃を
約24時間保つことができる。もちろんこれは1回ベンジンを注入しただけの時間で何度でも
使える。そういう理由から北極探検家、世界の巨峰に挑戦する登山家、オーロラ撮影カメラマン、
極寒の地での仕事や作業をされる多くの人々はハクキンカイロを愛用しているそうだ。
使い捨てカイロのようにゴミになることはないので、地球にやさしいとも言える。
また価格面では使い捨てカイロは1個40円くらいだと思うが、ハクキンカイロは
本体1800円
ベンジン500cc入り400円だから、保温時間を考慮しないとすると使い捨てカイロを60個買ったと
思えば、元がとれる計算だ。
ランニングコストはハクキンカイロの方がずっと優れている。
でもハクキンカイロにベンジンを入れたり、点火したり「めんどーだぜぃ」という現代人には
やはり使い捨ての方に軍配が上がっているということか。ちなみに私も勤務先では窓際族ゆえ
窓際の席が寒くて使い捨てカイロを使っている。胸ポケットに入れたり、腰に挟んだり、
靴の中に入れたり、耳に押し付けたり、、、足臭かった。。。。(笑)

そうそう、比較といえば、ハクキンカイロに対抗して松下電器が
黄金カイロという商品を
出したことがある。調査してみたら、昭和43年(1968)
ナショナル黄金カイロ(株)という
会社を設立してしまったくらいの力の入れようだ。
ハクキンカイロvs黄金カイロはいわば
「ゴジラvsメカゴジラ」のような戦いであったようだ。
点火方法はハクキンの方がライターなどの火種から点火する方法に対して、黄金カイロは
電池式で内蔵されたニクロム線が発熱することによって燃焼が始まる方式。
メカニック的には黄金カイロが優れているように思われる。
しかし、燃費(持続時間)はベンジン(燃料)を入れる容積の大きなハクキンカイロの圧勝で
あった。結果的には性能面で勝てなかったのだろうか、細々と生産は続けられたが90年代に
入って
生産終了となり、黄金カイロは、ハクキンカイロの人気に勝てず消えて行った。


ナショナル黄金カイロ

ここで改めてハクキンのホームページを見ると意外なことがわかる。
東京オリンピックでは「裏方」として万が一、「聖火のトーチが消えた場合」に備えて、予備用
ということで、ハクキンの技術が利用されていたそうだが、
長野冬季オリンピックの聖火リレー
では正式に「ハクキンカイロ」の技術と安全性の実績が認めら大活躍したそうだ。
株式会社ハクキンはカイロだけ製造販売していると思ったら大間違いで、
入浴剤、のど飴、
シルクソックス
なども取り扱っている。「温かい」というキーワードで入浴剤・ソックスという
展開はわからないでもないが、のど飴とカイロとの関係に苦しむぞ。飴がベンジン臭かったら
笑ってしまいそうだ。

    

さて、話を元に戻してハクキンカイロをロングセラー商品とするか絶滅寸前のこだわり商品と
するかであるが、調査した結果ではどうやら
ロングセラー商品にすべきだろう。
この暖かそうなおっちゃんの顔を見たらそういう結論としたい。
古くからのファンに応える企業姿勢にも、実に好感が持てるざます。
待てば
海路の日和あり、、、エジプトの首都はカイロ、北島サブちゃんも歌っている
カイロかなぁ〜 帰るのよそうかなぁ〜♪
そういうわけで、「ハクキンカイロ」には地球にやさしいエコロジーなグッズとして
これからも頑張ってもらいたいなぁ〜。

   


      
昭和初期のもの            昭和40年代のもの        現在のハクキンカイロ


株式会社 ハクキンのホームページ

(原稿:2003.2.16)


 
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