下校の生徒を狙う怪しげな物売り(テキヤ)

 

「ちびまる子ちゃん」の第一話にも登場したネタなのだが、下校の生徒を狙う怪しい

物売りを語らなくして、はすぴー倶楽部「セピア色の想い出」はありえないだろう。

一般に「テキヤ」と呼ばれており、まるちゃん流に言えば”どこから見ても よい人

だなぁ〜とは思えない”怪しげなおっさんなのである。

正門の近くだと学校側やPTAがうるさいのだろうか、テキヤが現れるのは正門を出て

最初の角を左に曲がった所か、神社の付近が多かったと思う。

ちょうど子どもたちの下校時間に合わせたように、足元に小さな箱をひとつ広げただけ

で不思議なものを売りさばいているのだ。

はすぴーの小学生時代(東京足立区)では以下のようなものを売っていたが、たぶん

地域、時代によって様々なものを取り扱っていたと思われるので、ぜひとも皆様からも

テキヤに関するお便りをいただきたいと思います。

 

★手品系

 

ちびまる子ちゃんに登場したのは「まほうカード」で、カード(トランプ)を裏返すと

絵が変わってしまうというもの。種明かしをすれば、絵が半分ずつ描いてあるだけの

ものだが、うまく人に見せればまるで魔法のようなカードになるのだ。

インチキおじさんは言う。「このカードは本当に1万円もするのだが、今日だけ特別に

80円で売ってあげよう」と。大人ならいくら何でも1万円のものが80円になるわけ

ねぇ〜だろと思うのだが、子どもというのは、まだ経済感覚とやらが養われていないから

「おっおっ、それは絶対に安い!買わなきゃ損だ!」と思ってしまうのだ。

 

そういうはすぴーも実はテキヤをさんざん儲けさせた口なのだ。(^^ゞ

今でもよく覚えているのが「レントゲンガラス」というもので、太陽の光に手をかざして

この万華鏡のようなガラスで自分の手を見ると、なんと指の骨がレントゲンフィルム

のように透けて見えるのだ。「どっひゃ〜すげぇーな」と誰かが奇声をあげると、

俺も俺もの大歓声。おっさんが言う「いいか、このレントゲンガラスは何でも透視する

ことができるんだ。今のは手を見たから骨がハッキリ見えただろ。くれぐれも女の先生

とか見たらダメだそ。裸で見えてしまうんだからな」

「デヘヘ♪、これを買ったら栗原先生の裸が見えるのか」その場にいる俺たちは全員、そう

思ったにちがいない。さらにおっさんが言う「これは普通なら大学病院に1万円で売って

いるのだが、今日は君たちだけに特別に50円にまけてやるよ。内緒だからな。それから

これは買ってから1時間たたないと機能しないからここで見てはダメだ。家に帰ってから

見ると約束できる子だけに売ってやるからね。おじさんは明日は来ないからね。」

そして、おっさんはその通り二度と来ることはなかった。(笑)

ちなみにこの「レントゲンガラス」の正体は二枚合わせたガラスの中に鳥の羽が挟み入れて

あるだけのもので、これで手を透かしてみれば、まるで指の骨のように見えるのはたしか

だった。栗原先生をみても何の変化もなかったことが一番、悔やまれる。

 

 

★不思議系

 

ガラスといえば「匂いガラス」というものもあった。これで机や柱などにゴシゴシと

こすりつけると、あら不思議、甘い香水の香りがするのだ。「匂いガラス」は大きさ

にして手のひらにちょうど入るくらいで、透明でやや飴色をしていたと思う。厚さは

3〜5ミリ程度で、かすかにカーブしていた。学校の机や椅子にこすりつけるのだが、

それほど強い匂いではなく、鼻を近づけてクンクンと嗅がないとわからないくらいの

匂いである。他には使い道のないガラスであるが、前述の怪しいおっさんと同様に

”特別に今日だけまけてもらい”、翌日には現れなかった。

中学に入ってから技術の先生から聞いたのだが、「匂いガラス」の正体はアメリカの

B29爆撃機の防風ガラスの破片だというのだ。事実はわからないが、あの甘い匂い

はアクリルの匂いだと言われてみれば納得のできる話だ。

 

 

★生き物系

 

テキヤは動物や昆虫も”特別に今日だけ破格の値段”で売っていた。はすぴーが

一番多く出会ったのは「ひよこ」と「ミドリガメ」だ。

正門を出て最初の角を左に曲がった所にゴザを敷いて、おっさんは何十羽という

ひよこを売っていた。小さなひよこは実に愛くるしくピーピーと鳴いていて、

「さぁさぁ、ひよこたちも君たちに世話をして欲しいと鳴いているよ。こんなに

かわいいひよこはすぐに売れちゃうから早い者勝ちだよぉ〜」

箱に餌付きで当時いくらだったのだろうか。子どもに買えるくらいの値段設定だ

ろうから100円くらいだったのか??

案の定、これらのひよこは1週間もしないうちに死んでしまうのだが、はすぴー

のクラスメートの渡部君は、ひよこをニワトリにしてしまい人気者になった。(ホンマデス)

その後、ひよこは体を緑、青、ピンクに塗られて「色付きひよこ」として売られる

こともあったが、色付きはさらに軟弱だったそうだ。

 

ちょうどその頃、森永スキップチョコ、チョコボールでミドリガメが懸賞品として

もらえたのだが、「アマゾンからやってきたミドリガメ」というくらい珍しい

生き物であった。それを正門を出て最初の角を左に曲がった所という身近な場所で

売っているのだから、貯金箱を壊した友達も多かった。

ミドリガメはひよこと違って長生きしたらしい。クラスメートの渡部君は、ミドリガメ

をガメラにしてしまい人気者になった。(ウソデス)

 

さらに生き物系としては、カブトムシも売っていたが、ミカン箱の中でたくさんの昆虫

が蠢いているというものは、気持ち悪かったなぁ〜。。。

 

 

★親孝行系

 

テキヤの中でも、親孝行系のものを子ども相手に売っているおっさんがいた。

はすぴーが覚えているのは針の目通し器というもので、針の穴に糸を入れやすく

するための小さな器械だった。仕組みはわからないし、どれだけ便利なものかも

不明なのだが、「君たちのお母さん、おばあちゃんは針仕事をする時に穴に糸が

入らなくて困っているだろ。ところがこれを使えば簡単に糸が入るんだ。これを

持って帰ったらお母さんはきっと喜ぶよ」とおっさんが言う。

親孝行の渡部君はこれを買ったと思うが、そこまでは覚えていない。

その後、30年ぶりにこの器械を西新井大師で発見した。今でも売っているのかと

はすぴー的にはすごい衝撃だった。

 

★粘土系

 

テキヤの部類に入るが、これには「カタ屋」という名前がつけられていたから、定番

ともいえ、頻繁にあらわれ滞在期間も1週間くらいいた点で他とはやや性格が異なる。

とはいえ、正門を出て最初の角を左に曲がった所にいる怪しげなおっさんという点で

共通しており、どうやらこれはテキヤ業界のデファクトスタンダードなのかも知れない。

 

カタ屋は動物やマンガのキャラクターなどを型どった「粘土型」に上から粘土をはめ

込んで、それに金粉、銀粉、赤や青といった粉をぬりえのようにふりわけ、美しい

粘土の面を作り出すというものだ。この出来具合の良し悪しによって点数を書いた

紙をもらえ、点数が増えると現金に換えてくれるというものなのだ。だから1週間くら

いして、点数がたまってくる頃に消えてしまい、ます数ケ月くらいして来た時に

前回のものを持っていくと「これは別のおじさんの点数カードだからダメだね」と

リセットされてしまうのだ。

世の中には「カタ屋」をマジに研究している人もいるので、ぜひともこちらのサイト

「カタ屋研究会」を参考にして欲しい。驚くほど深く研究させている。

またネットのお友達情報によれば、カタ屋は今でも健在しており、東京とその周辺で

ときたま出没しているようだ。

 

紙芝居屋さん縁日の想い出のページでも紹介したが、カタ屋と似て非なるものに

「カタ抜き」というものがある。(地域によってはナメ抜きとも言うらしい)

動物やヒョウタンなどの図柄が画かれた長方形の薄い板(食べられるがマズイ)を

針のようなもので抜き出すという遊びだ。やってみるとかなり難しいのたが、割れず

にうまく抜け出されたら現金がもらえた。このカタ抜きも健在で、去年地元の縁日にも

現れたので、おっさんに聞いたところ28年間に一度だけ1万円を小学5年生の子に

払ったことがあると言っていた。

ちなみにカタ抜きの図柄は、はすぴーがガキの頃とほとんど変わっていないので

妙に懐かしかった。こちらを参照してください)

 

 

★現在版インチキおじさん

 

さて、これらの怪しいインチキおじさんは、現在ではほとんど見かけなくなった。

学校側やPTAもうるさいのだろうし、子どもたちも賢くなり、また別の楽しい

ものが色々とあるから、テキヤの物売りには興味を示さなくなったのだろう。

ところで、2年前のことだが、現在版インチキおじさんを新宿や池袋の駅前で発見した。

(正門を出て最初の角を左に曲がった所でないのが残念だ)

商品名「ジャンピング・ジョニー君」。あっ、あれか、、、と思った人もいるだろう。

大きさにして10センチくらい。紙でできた人形で、足の部分がゴムでできている。

はすぴーが見たのは、おっさんでなく外人の女性だったが、彼女がその人形のジョニー

君に「ヘイ、ジョニー、ジャンプ!」というとジョニー君は20センチくらい飛び

跳ねる。「ヘイ、ジョニー、スリープ!」というと、人形はグッタリする(寝ているらしい)。

この「ジャンピング・ジョニー君」は2人一組で売っていて、もう一人は客を装い

コートの中でピアノ線を操作しているのだが、そのピアノ線がまったく見えない。

実によく出来ているとしかいいようがないおもちゃだ。

ジョニー君は説明書入りで1個1000円(4つで3000円)で売っていたが、原価にしたら

10円くらいだろうか。サラリーマンやOLたちが結構、買っていたからボロ儲けに

なったのかも知れないなぁ〜。

 

もうひとつ。これは手品の一種だと思うのだが、サイコロの目を当ててしまうというもの。

直径3センチくらいのプラスチックの容器(軟膏を入れるような、あるいは昔、検便で

使ったような入れ物【笑】)にサイコロを2つ入れ、容器を2度振る。そしておっさんは

「3と5」とか「2のゾロ目」とか言い、容器のフタを開けるとズバリ的中。

さらにはお客に容器を振らさせて、自分が当てることもできる。仕掛けはわからないが、

見事といえば見事。「さぁ、これをマスターすれば宴会やスナックで貴方は人気者だ。

練習はいらないよ。この説明書を読めば誰にだって出来る芸当なんだ。今日は特別に

この不思議な入れ物とサイコロと、そして説明書をつけて1000円に大マケだ」と。

価格的には、むちゃくちゃ高いが、なぜそんなことが出来るのかを知りたいもんだ。

結構、若いサラリーマン・OLたちが購入していたので、どこかのサイトで種明しが

暴露されているかも知れない。

 

以上、最近見かけた現在版インチキおじさんたちであるが、このおっさんたちは次に

何を売るのか妙にワクワクしてしまうはすぴーであった。

現在版インチキおじさんについても、もしかどこかで見かけたならば、ぜひ掲示板に

でも教えていただきたいと思います。(よろしくっす!)
 

(原稿:2001.10.8) 


 

「あの頃」のセピア色の想い出

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