絶滅寸前こだわり商品No.10

ねずみ捕り

 

「ねずみ捕り」といっても、警察が行う交通速度違反の取り締まりのことではなく、

(ネズミ)を捕らえるための金網でできた籠状の器具のことなのだ。

「そんなもん知らねぇ〜な」という人のために、簡単に説明すると、大きさは底が

A4くらいでドーム型の籠(カゴ)になっている。中央に餌を吊るす部分があり、

ネズミがそれに食らいつくと入り口が閉じる仕掛けになっている。さらに天井からも

進入できるようになっていて、”入れるが出られない”工夫もあり、一度に2匹以上

捕獲できるようになっているのだ。当時、はすぴーの家には池があり、捕まえたネズ

ミは籠ごと池に沈められ、水死させられていた。アーメン合掌

最近では、家庭でネズミを見かけることがなくなったので、この器具そのものも

見かけなくなった。もう売っていないのかなぁ〜、、、とそんな疑問を持ったので

ちょっくら調べてみることにした。

 

昭和30〜40年頃の家は、磯野かつお君の家にしても、さくらももこさんの家に

しても「平屋(1階建ての家)」が一般的であり、むしろ2階建ての家の方が珍し

かった。はすぴーの家もそうであり、朝、目が覚めると天井裏を走り回るネズミの

音が聞こえることがある。そんな時には、父が「ん?今日はネズミの運動会の日か?」

などと呑気なことを言っていたことを思い出す。

 

たぶん当時の家庭は今とは違い、建材そのものも粗末であっただろうから家自体の

機密性も低かったし、冷蔵庫も普及していない時代だったので、ネズミの餌が

そこいらに散乱していたから、どこの家庭にもネズミが居着いていたと思われる。

はすぴーの実家では家庭の中でネズミを飼っていた状態だったのかも知らない。

 

ネズミは人間さまの安眠を妨げるだけではなく、伝染病の媒介、電線をかじって漏電

させて火災の原因となったり、ガス管や電話回線を食いちぎって断線を引き起こす

などとにかく悪いやつなのだ。

にもかかわらず、アメリカでは「ミッキーマウス」に代表されるようなアイドル的

存在だったり、「トムとジェリー」「マイティマウス」のようにネズミを捕まえる

ネコの方が悪者になっていることが、日本人の私には解せないところだ。

話はそれるが、「ベン」という映画をご存知だろうか。たしか幼い頃のマイケル・

ジャクソンがバラード調の主題歌を歌っていたと思う。中国に配給された際に「便」

と漢字で書かれたかどうかはさだかではない。(笑)ヒッチコックの「鳥」の

ネズミ版なのだ。人間にイジメられたネズミのベンが仲間を集めてたくさんのネズミ

軍団が人間を襲うという物語なのだが、ここでもネズミはあまり悪者になっていない

のが不思議な気がする。

 

さて、本題に戻るが、「ねずみ捕り」が現在でも売られているかどうか、まずは

聞き取り調査から開始した。足立区在住の主婦Kさん(40歳)によれば「スーパー

などでは、全然見ませんねぇ〜。需要がないからでしょうか。昔ながらの金物屋

さんあたりを探してみてはどうでしょうか」との回答を得られた。聞き取り調査は

以上の1名。←要するにうちのカミさんに聞いただけ(笑)

 

インターネットで「ねずみ捕り」を検索してみると、2千件以上のサイトにヒット

したが、たいていのものが、どこそこで警察の「ねずみ捕り」をやっているから

注意しろとか、「ねずみ捕り」にひっかからないためのレーダー感知器の紹介ばかりで

なかなか私の探し求める金網の器具がなかった。しかし色々と検索しているうちに、

それらしい「ねずみ捕り」グッズを発見することができた。なんと最近の「ねずみ捕り」

「ゴキブリホイホイ」みたいに貼り付けてしまうのだ。またはネズミの好む嗜好物を

ベースにした殺鼠剤忌避スプレーなどもあった。さらにアメリカとカナダで開発され、

1999年に特許を取得した『ペストX』というハイテク商品は、超音波と 電磁波の両方を

利用し、家屋のネズミなどを完全にブロックしてしまう優れものまであった。

 

さらに検索を続け、ようやく、今回の調査対象である金網製の「ねずみ捕り」を見つける

ことができた。現在でも製造・販売しているのだ。これを製造しているメーカーは大正

5年に創業し、昭和11年には「流線型網製鼠取」を開発した『タナカ金網株式会社』

(大阪府)という会社だ。現在の主要商品は家庭用の焼き網、魚焼き器、バーベキュー用

の網などらしいが、昔ながらの「ねずみ捕り」も製造していることがわかった。

その他、大阪周辺で3社ほどが作っているだけのようだ。

 

今回の調査でわかったことを整理すると、だいたい次のようなことになる。

日本に「ねずみ捕り」が上陸したのは明治32年のことで、そのきっかけは東海・

関東地方で猛威をふるったペストのためだったらしい。鼠板と呼ばれる板に強力な

バネを付けた方式(よくトムがジェリーに仕掛けたやつ)のものと、今回の調査

対象である金網製の籠タイプのものが普及した。

 

最近では、家の中のネズミはめっきり減ったのは確かであるが、ネズミ全体の数は

減ってはおらず、ビルの中や下水、地下街では増えている傾向にあるそうだ。

要は、ネズミの住む場所が家庭以外の場所に変わっただけということになる。

そういえば、私は地下鉄を利用して通勤しているのだが、いつぞや線路にネコかと

思うくらいの巨大ネズミを見つけたことがある。

 

家庭から減ったとはいえ、ネズミで困っている人もいるわけで、家庭用「ねずみ捕り」

はお手軽という理由で先の「ゴキブリホイホイ」タイプの接着剤方式が主流となり

つつあるようだ。しかし根性の入ったネズミや超人ハルク化した巨大ネズミにはあまり

効果的ではなく、やはり金網製の籠ドーム型を要請する根強いニーズもそこそこあるらしい。

 

また籠ドーム型ネズミ捕りの正しい設置方法を知ることができた。それによると、、、

・餌は臭いの強いものがいい(トムがジェリーに仕掛けたチーズは正解)

・ネズミは赤い色を好む習性があるので、紅しょうが入りの薩摩揚げがベスト

・仕掛ける場所はネズミは自分の通路に障害物があると、避けるので通り道ではなく、

 そこから1メートルくらい離れた部屋の隅がいい

・捕まえたネズミは車の排気ガスを直接当てるとすぐに死ぬ

この原稿をここまで書いた時、足立区在住の主婦Kさん(40歳)=要するにカミさんが

買い物に行くので、アッシー君をやれという。行き先は地元の方しかわからないだろうが

「ロジャース(川口店)」「ビバホーム(草加店)」と同じような店をまわった。

カミさんが買い物をしている間、私は暇だったので、ねずみ捕りを探してみたら、

それは普通に売られていた。ロジャース850円、ビバホーム780円。

まっ、値段も予想していたよりかは安いし、そこそこ需要もありそうだと判断していい。

したがって、

今回の調査対象「金網型ねずみ捕り」に関しては、

当分の間は絶滅することがないものと結論づけることにする。

 

(オマケ)

「ゴキブリホイホイ」タイプの接着剤方式のものは色々な種類があり、やや驚いた。

メーカーはアース製薬など有名な会社だ。しかし取り扱いや捕り方に関しては詳細に

記載されているのだが、捕まえた後の処理については、ほとんど説明されていない。

うーむ、シートに貼りついたネズミはどうするんだろう、、、と考えながら他の商品の

裏書きを読んでいたら、次のような文章が書いてあった。

『ネズミごと二つに折って付属の袋に入れ、生ゴミとして速やかにゴミ箱に捨てましょう』

えっえっ、、、捨・て・る!とな。。 気持ち悪りぃ〜

我が家にはネズミ小僧みたいな娘は3人いるが、本物のネズミは今のところいないので、

もし出てきたら、ホイホイタイプではなく、超音波&電磁波を駆使したハイテクグッズの

『ペストX』を購入しようかと思っている。

       

 


(原稿:2001.8.4)


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